社内オフ会で運命の出会い

今夜は、ちょっとしたオフ会だった。きっかけは、社内のネットワークに設置された掲示板システムのひとつ、フリーボードでの僕の書き込み。「会社のはす向かいにレストランバーがオープンしたよ。金曜日にみんなで繰り出してみよう」という一文に、社員が呼応し合った結果だった。だけどまさか、彼女が来るとは予想外の展開だった。

「どうしたんですか?」

「あ、いや、突然だったもんで。僕の名前はトモヤ……って、それは知ってるか。本名は水原智哉って言うんだけど」

「やっぱりそうかぁ。開発部の水原さんですよね? たしか、沢井さんと同じシマの」

「沢井、知ってんの?」

「大学の先輩なんです。どちらかというと、奥さんのほうをよく知ってるんですけど」

彼女が一瞬、口ごもったような気がした。ここでふと、僕の頭の中に嫌な考えがよぎった。ひょっとしたら彼女はあのメールの主で、しかも沢井が言ったように「アブない女」なんじゃないだろうか?

「あ―、全然飲んでないじゃないですかぁ。ワイン、注いじゃおうっと」

知らない間に彼女のペースにのせられている自分がいた。疑惑は……もうどうでもよくなっていた。

なにより、彼女はとても魅力的だ。行動派で、それでいて芯がしっかりしていそうで、僕の好みのタイプだったり。

「うぅっ……なんだか気持ち悪い……」

酔ったせいにして彼女の肩に手を回すよりも先に、僕は彼女の背中をさすっていた。しかも初めて会ったお店のトイレで。

翌日、休日出勤した僕は、好奇心から社内のデータベースにアクセスしていた。それはマル秘でもなんでもなく、いわゆる社員名簿みたいなもの。目的は、そう、岩瀬真琴の正体を確かめるためである。

「イ・ワ・セ・マ・コ・卜。あ……いた」

彼女は総務課の女の子だった。メールアドレスもちゃんとある。しかも、1年前のあのメールの差出人アドレスと同じだ。それじゃなぜ、あのとき返事が出せなかったんだ?
データをもう一度見直してみて、僕は妙な事に気が付いた。彼女の入社は今年。つまり、1年前にはこの会社の人間じゃなかったのだ。当然ながらメールアドレスも発行されていないはず。いったい、どういうことだ?
1時間ぐらいは呆然としていた。が、このまま考えていても埒があかないと思い、頭の中を整理すべくもう一度くだんのメールを確かめてみることにした。
「あ……、あれ?」
僕は自分の目を疑った。マコトからのメールはすべて”未来から“届いていたのだ。しかも1通目の日付は今日の夕方。2通目と3通目は週明け月曜日の朝になっている。しかも、僕は重大な事を見落としていた。3通目の内容を読んでいなかったのだ。
僕はおそるおそる「こんな私でよかったら…」という題名の、そのメールをクリックした。
さっきのメールの追伸です。
こんな大事なこと、メールで書くのは失礼かもしれないけど、会社はお休みだし(今は、自宅で書いています)、直接だとすごく恥ずかしいのでメールにしました。
ひょっとして彼女募集中だったりします?
もしそうなら、私、立候補しちゃいます。こう見えても料理とか好きだし、結構つくすタイプだし、お買い得だと思いますよ。あ―、私何書いてるんだろ。でもね、昨夜のことをきっかけに、水原さんのことが好きになったのは本当です。お返事、待っています。マコト
紛れもない「愛の告白」メールだった。しまった。どうしてあのとき一緒に読まなかったんだ。悔やんでも悔やみきれない。
「ん?待てよ……」
次の瞬間、僕は彼女宛にメールを書いていた。おそらく、返事は届かないだろう。だけどその後の展開はよく知っている。僕を待ち受けているのはハッピーエンドだ。不思議なぐらい冷静だった。僕は軽やかにキーボードをタイプし、こう書き始めた。
昨夜のこと、覚えていますか?

出会っちゃおう!!北海道 優良 出会い

No related posts.

このエントリーを含むはてなブックマーク Buzzurlにブックマーク livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ

イメージ画像